マンションを設計する上でポイントの一つに、省エネルギーの設計があります。
昔は屋根・壁・床など、それぞれに必要な断熱性能が決められていて、使用する断熱材の性能から厚みを計算していました。今では断熱性能だけではなく、1年間にどれだけ消費エネルギーを削減できるか計算によって確かめなければならなくなりました。

いわゆるゼッチマンションです。

このゼッチマンションのメリットとしては、快適な居住空間と一年を通して使用するエネルギーを削減でき、また不動産価値が向上する事です。逆にデメリットは、断熱材に加え断熱サッシや省エネ機器を導入し建設コストが上がってしまい、住宅価格が高くなる事です。それでも長期的に見れば光熱費などを安く抑えられる所は魅力的と思います。

初めに設計したのは、一年間の消費エネルギーを30％削減できるマンションです。特徴として外壁・天井の全面に断熱をする事と、断熱ガラス（ガス入りペアガラス）、高効率給湯器、高効率エアコンの実装です。また、照明器具は全てLEDを採用しています。天井全面に断熱することは施工が難しく天井が低くなってしまわないように、建築工事・設備工事・電気工事それぞれ入念に打合せをした事を覚えています。

その後、幾つかのゼッチマンションの設計経て今回、消費エネルギーを100％削減できるマンションの設計に携わることが出来ました。

特徴として、再生可能エネルギーを作るためコージェネレーションシステムと太陽光発電を採用している所です。コージェネレーションシステムは、ガスで電気を作るエネファームを採用しています。このエネファームの特徴は電気を作るとともに発生する熱を利用し、給湯及び貯湯する事が出来るシステムです。エネルギーを余すことなく使えるとても優れたシステムです。
また、太陽光発電は昼間の太陽光を利用し発電するシステムです。屋上に何百枚ものパネルを敷き詰めるため維持管理が重要になってきます。昼間に発電した電気は蓄電池を設け夜間にも利用できるようにします。この蓄電池システムは省エネだけでなく、災害時の電力供給にも使える一石二鳥の設備となります。どちらも至れり尽くせりのとても便利な設備です。そのため快適な住空間となり住まい手としては満足いく仕様だと思います。

近い将来はこのゼッチマンションがスタンダードとなります。その先駆けとして2025年の竣工が待ち遠しいです。

常務取締役　笠原明宏